カリカリ、キー…カリカリ、キー…。
不快音とともにはじまる物語は、観客が“不穏な間取り”を前に妄想をふくらませている間に、ドギツい結末にたどりつきます。
映画「変な家」は、はじまりと終わりで“怖さ”の種類が変わる、ミステリー的魅力をもった作品です。
原作者は「よくわからない」「全貌がみえない」物事こそが恐怖であるとして、謎多き作品を手がける雨穴(うけつ)さん。
雨穴ならぬ雨男を主人公に据えた映画「変な家」を紹介します!
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この記事には映画の結末や重要なネタバレを含む可能性があります。未鑑賞の方はご注意ください。
公開日 | 2024/3/15 |
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監督 | 石川淳一 |
原作 | 雨穴 |
脚本 | 丑尾健太郎 |
キャスト | 間宮祥太朗 佐藤二朗 川栄李奈 ほか |
音楽 | 小島裕規“Yaffle” |
上映時間 | 1時間50分 |
配給 | 東宝 |
公式サイト | 「変な家」公式サイト |
上映劇場 | 「変な家」上映劇場 ※公開当時の情報です |
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【変な家】映画は怖い?実際に見た評価・感想
”ホラー映画マニア”として、私が映画館へ見に行ってきました!
「ストーリー展開」「怖さレベル」「キャストの魅力」「再鑑賞」について、5段階評価をつけて、感想を述べさせていただきます。
ストーリー展開
めっちゃ楽しみました!
雨穴さんのオリジナル版がもつ不穏な雰囲気を保ったままで、エンタメ映画としてやりきっていてよかったです。
ひとつの“間取り”から、脈々とつらなる一家の物語へとひろがっていくミステリー。
「自分の隣人に、片淵家のようなルーツがあったなら…」とゾクッとできるリアリティもあります。
怖さレベル
雨穴さんの動画は、ゾッとする内容と反比例した、雨穴さんのキモカワなキャラが持ち味です。
その内容と外見との緩急でクスッとくるのが雨穴ワールド。
雨穴さんが保ちたい“深刻度”をうまく再現した映画化だったと感じました。
謎解き要素が多いので、怖さより好奇心が勝る
“怖さ”についてのくわしいあれこれは後述します。
結末への評価
片淵家のなかにも、伝統に疑問をもつ側がいたことで、いけにえ文化に終焉がおとずれます。
はじまりは、純粋に“不幸を恐れる気持ち”から生まれた左手供養も、邪念が混ざっておぞましさだけが際立つ結果となりました。
村ホラーのファンタジー性を担保しつつ、ネットを住処とした雨穴さんがまとう“都市伝説感”も再現した、いいバランスの結末だったと思います。
再鑑賞
原作読了、雨穴さんのYouTubeチャンネルも完走済みの筆者、再鑑賞というより新しい作品がはやく見たい!
【変な家】映画は怖い?怖さに対する評価や年齢制限はある?
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ホラー映画よりはミステリー要素の方が強い
佐藤二朗さんのキャスティングからして、直球ホラーではないことはあきらかです。
本編には、幽霊を思わせるミスリード描写がありましたが、それも原作を知っていればクスッと笑えるおもしろカットにとどまります。
雨穴さんの作品は、いわゆる“ヒトコワ”に分類されるものが多いのが特徴。
「変な家」の核となる片淵家も、なかなかのおぞましさながら、突き詰めればおなじ人間です。
攻撃されれば崩れてしまう、伝統の脆弱さにもすこしの人間味があるので、やはりヒトコワと感じました。
「変な家」映画は年齢制限はない
すべての方が鑑賞できます。性描写がないのが判断理由でしょう。
ただ、後述しますが視覚、または聴覚にうったえる恐怖カットがないわけではありません。
真偽があいまいなことを楽しむ構成なので、幼い子どもはかなり怖く感じるかも。
「変な家」映画の怖さの真相とは?
変な間取りをきっかけに真相を追求して、一応の答えにはたどり着ける物語。
ですが、「で、なんでそんなことすんの?」という根源的な謎は解決されないので、人間の怖さが際立つのだと思います。
「一族の決まりだから」という大義名分に疑問をもたない片淵の面々こわすぎる
四方を囲まれた空間を内包した“変な家”は、あれこれ妄想をふくらませても、真実を知っても怖い、恐怖から逃れられない構造が魅力です。
【変な家】映画の怖いシーン・場面3選(ネタバレ含・要注意)
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①善意にかくされた真実
宮江柚希(川栄李奈)の母・松岡喜江(斉藤由貴)の真実にゾッとしました。
慈善活動にとりくむ自立した女性に見えていた喜江は、ホームレスの近くに身を置くことで、儀式のための左手を“手に入れよう”としていたのです。
長女である綾乃(瀧本美織)の、まさしく“手助け”をせんという親心
「柚希を片淵家の伝統から守りたい」という思いと反対に、「やるなら手伝うよ」というアンビバレントな姿勢が人間くさいです。
②THE・ホラー映画な仕掛け
オープニングから不快な“爪ギギギ”シーンで全開に飛ばしてきますので、冒頭でしっかりと身構えができます。
そうして防御力高めになった観客へ向けて、大きな音で驚かせたり、不気味なアングルで襲ってみたり、恐ろしい画で迫ってきたりとやりたい放題ホラーみ全開で向かってくる作品でした。
うじ虫大量発生注意報発令!
それでも、主題は“ヒトコワ”なので、幽霊ムリなあなたも楽しめるでしょう。
③間取りの謎
本作の主軸である“間取りの謎”。
雨穴さんの作品のスタート地点でもある、間取りが記された1枚の紙は、物語の導入として力強いです。
東京と埼玉、2つの家の“変な”間取りに共通するのは、隠し通路と、窓がなく、トイレが備え付けられた独房のような子ども部屋の存在でした。
子ども部屋の床下に伸びる隠し通路は、殺人を行うためにつくられたと思われていましたが、実際は外敵から身を守るための防空壕の役割を果たします。
【変な家】映画のネタバレあらすじ(ラスト・結末まで)
ある日、築わずか1年の一軒家が中古で売りに出されました。
その一軒家の間取りには、おかしな点があります。
家の中心には、窓のない子ども部屋。子ども部屋には、部屋備え付けのトイレがありました。
そして、子ども部屋を囲むように各部屋が配置され、家の外から、子ども部屋の存在が見えないようにつくってあるのです。
そして、子ども部屋の床下には長方形の不思議なスペースがあり、壁の裏で浴室と繋がっていて……。
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起:一軒家の謎の間取り
都市伝説や奇妙な話をネット上で配信しているユーチューバーの雨男(間宮祥太朗)は、近ごろスランプぎみでした。
雨男のマネージャー兼アドバイザーである柳岡(DJ松永)は、雨男が“バズる”きっかけになればと、とある一軒家の間取りを取り出します。
柳岡は、家族で一軒家を購入するつもりでしたが、この家の間取りはどこか変なのです。
「動画のネタになるかもしれない」と感じた雨男は、知り合いの設計士・栗原(佐藤二朗)と間取りを共有しました。
一見意味のない部屋や通路の存在に、栗原は「殺人のために建てられた家ではないか」と衝撃の推理をします。
続けて栗原は「私なら絶対に買いません」と言いきるのです。
承:死体遺棄事件の謎
“変な家”について調べを進めるなか、柳岡から雨男に電話が入ります。
柳岡は「“変な家”の近くの雑木林でバラバラ死体が発見された。気持ち悪いから購入はやめる」と言うのです。
いよいよ“変な家”の真相が気になってきた雨男は、自分のチャンネルで“変な家”の間取りについて紹介しました。
すると、宮江柚希という人物からDMが届きます。
柚希は「動画で雨男が紹介していた間取りに心当たりがあるので会いたい」と言いました。
転:柚希の正体や新たな間取り図
宮江柚希と名乗っていた女性は、偽名でした。
柚希の本名は片淵柚希といい、“変な家”を建てた人物の妹だと言います。
そして、“変な家”はもう一軒存在しており、そのどちらともが、姉夫婦が住んでいた家だと言うのです。
姉夫婦とは長く音信不通であること、実母とも疎遠であること、父親を事故で亡くしたこと。
半生を語る柚希が見せた“もうひとつの変な家”の間取りも、栗原の妄想によれば「殺人のために建てられた家に見える」のでした。
結:事件真相の謎
姉夫婦の足取りをつかむため、実母である喜江に話を聞きにいく柚希に、雨男と栗原が同行します。
喜江は、柚希の来訪の理由を察し、ひどくおびえながら「片淵の本家に近づいてはいけない」と柚希を叱りつけました。
勝気な柚希は、喜江の言葉を無視し、ひとり本家へと向かいます。
気が進まないながら、結局後を追った雨男と栗原とともに見つけ出したのは、奇妙な本家の間取りに隠された“隠し通路”と“地下牢”でした。
地下牢にはひとりの子どもが幽閉されており、真っ暗な石壁に囲まれた一室にある物々しい祭壇には、人間の手首が奉納されていたのです。
片淵家は「左手首を献上する」ことで、古くから伝わる一族の呪いを鎮めようとしていたのでした。
“変な家”は、「左手供養」と呼ばれる儀式に合わせ、他人の左手を入手するために建てられた家だったのです。
呪いや言い伝えを信じるあまり、一家もろとも洗脳状態となってしまった片淵家の悲しい恐怖心が“変な家”をつくりあげたのでした。
…雨男たちによって、片淵家から救い出された子ども。
一応の決着に安堵しつつも、片淵家の呪いは根絶やしになったわけではないのかもしれません…。
【変な家】映画の解説:ラストシーンや家系図・原作について
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「変な家」ラストシーン解説
雨男が住む部屋の壁の一部が浸水して、壁のなかからうじ虫が這い出てくるというラストシーン。
近所との交流が希薄な現代、マンションのお隣さんが“変”な人かもしれないし、もしかすると、マンション全体に設計の段階で隠し通路が張り巡らされているのかもしれない……。
雨穴さんの作品にふれた読後感にも重なる、不気味で“変”なラストシーンでした
「変な家」家系図を解説
原作版とは異なる映画版の登場人物ですが、ゆえにシンプルになっています。
恐ろしい儀式が伝わる片淵家ですが、柚希から見て綾乃と慶太(長田成哉)が姉夫妻。
苗字は変わっていますが松岡喜江が母。
重治(石坂浩二)と文乃(根岸季衣)が祖父母にあたります。
森垣清次(髙嶋政伸)は親戚という設定です。
「変な家」原作は雨穴のyoutube動画&小説
ウェブライターである雨穴(うけつ)さんが、2020年10月30日に自身のYouTubeチャンネルにて発表した【不動産ミステリー】変な家という20分強の動画に端を発したのが、書籍版であり原作小説の「変な家」です。
元々小説やコミックスありきで始まった企画なのか定かではありませんが、創作と現実の境目が至極あやふやな雨穴さんの作品群は、壮大なロジックと文脈で形成されていそうな気もします。
「変な家」映画と原作の違い
原作には、近親相姦を主としたおぞましい村ホラー要素が含まれています。
映画版でも、“本家”でのシーンからは一気に村ホラー方向へ舵がきられますが、詳細な登場人物は微妙に変わっていました。
原作ではさらに、柚希たちの従兄弟にあたる人物など、片淵家の広がりが大きく描かれています。
また、物語の肝である「左手供養」についても、ディテールは変わっていました。
「変な家」映画の続編の可能性は…
雨穴さんのYouTubeチャンネルには、他にも間取りを元に展開されるミステリー作品が存在します。
また、人気動画「変な絵」「差出人不明の仕送り」などを、“変シリーズ”のようにシリーズ化して「変な家」の続編として映像化することも可能でしょう。
雨穴作品の愉しみ方として映画化が最適解かは不明ですが、話題の作家なので続編が作られるような気がします。
【変な家】映画は怖い?評価・感想とネタバレあらすじのまとめ
完全理解とはいかない都市伝説めいた内容が、じわじわ背すじを冷やす“おつな”ホラー「変な家」。
びっくりどっきりするというよりは、「…怖」とつぶやくような怖さでした。
雨穴さんが所属するウェブメディア・オモコロの編集長が、一番最初に原作を読んだときの感想が「こえーーーーーーーーーーーーーーーーーー」だったということなので、深く考えずに感じたまま楽しむのがいいと思います。