この記事では大ヒットした映画「ミッドサマー」を代表する問題シーン“性の儀式”を掘り下げるとともに、舞台裏もあわせて考察していきます。
「スウェーデンを舞台にホラー映画をつくらないか」と言われ「なに撮ったらいいかわからんな」と思っていたらしい、当初のアリ・アスター監督。
気がつけば、狂気の裏設定とサブリミナルで、ものすごく意味や思い入れがありそうな作品ができあがるのも、まさにアリ・アスター。
決して気分の良い映画ではありませんので、胆力のある人だけで楽しもうではありませんか。
【ミッドサマー】性の儀式とは
アメリカでなんとなく暮らしてきた若者たちが、人里離れたコミューン・ホルガでカルト的展開に巻き込まれるフォークホラー映画「ミッドサマー」。
アリ・アスター監督名物「よくわからない」で構成された、謎だらけの村人による、謎だらけの儀式からの謎だらけの大殺戮!
本作には「どう見たらええねん」的シーンが山ほどあるのですが、そのトップ・オブ・ザ・トップが“性の儀式”でしょう。
シンプルにセックスではありつつも、ヘンすぎるディテールに苦笑!
【ミッドサマー】性の儀式は本当にやってる?撮影の壮絶な舞台裏
それでは、“性の儀式”について多方面から考えていきたいと思います。
まずは、撮影の裏話から。
性の儀式の撮影には2週間を費やした
前提として、撮影で挿入はおこなわれていないはずです。
村人たちに“手ごめにされた”クリスチャンを演じたジャック・レイナーの口から語られた衝撃の撮影日数。
さすがに儀式のシーンだけを2週間撮り続けていたわけではないと信じたいですが、どうでしょう?
アリ・アスター、やばい人なのかもしれません。
たしかに、1対1のノーマルセックスではないですし、芝居の選択をミリ間違っただけで悲劇的にサムいシーンになり得たはず。
完成品とて“草生える”おもむき。
2週間撮って「結局ファーストテイクがよかったよね」とか言われたら、私は編集所のアリに火を放つかもしれません。
ジャックの熱演と、苦労話の尽きないインタビューから、「本当にやっている」という噂がひとり歩きしたのでしょう。
役者冥利につきる都市伝説だと思います。
性の儀式を見て泣くダニーの撮影には2時間
2時間が妥当でしょう。
ダニー(演/フローレンス・ピュー)が、彼氏であるクリスチャンの“儀式”を見てゲロを吐き、村人に囲まれて嗚咽するシーン。
直前の儀式シーンでは、セックスによる快感が村人に伝播していく描写があります。
どうやら、感情を共有することがホルガ村のポリシー。
ダニーが怒りと悲しみに震えるとき、村人もまた同調するようにパニックを起こします。
ダニーと村人の嗚咽はしだいに咆哮となり、ほとんど集団パニック状態に。
この撮影でフローレンスは、村人役の俳優たちと励まし合いながら、2時間の狂気を起こしたのだそう。
のちに「恐ろしかった」とこのシーン撮影を振り返ったフローレンス。
周囲の気迫もあいまって、役柄との境界が溶ける、まさに恐ろしい状態に陥っていたのでしょう。
カット割り、画の強さ、意味、人数…2時間が妥当と感じます。
全裸になるのはジャック・レイナー自身のアイデア
狂人に映画製作はできない。全員がプロフェッショナルです。
いま思えば、クリスチャンが着衣状態では成立しなそうな儀式シーン。
実は、クリスチャンが全裸に“される”描写はジャック・レイナー本人の提案だったのだそう。
“性の儀式”はクリスチャンの人格を破壊する屈辱的なものでした。
徹底的に奪われる描写としては、全裸以外ありえなかったと思います。
ジャックは「これまでの映画界が抱えてきた女性への配慮不足、その仕組みへのアンチテーゼという意味もあった」と語りました。
新しい人たちによる映画製作で、気鋭のA24印を背負いながら、俳優自身の尊厳を奪うような行為があってはなりません。
俳優はプロとして、死ぬこと・殺すことをふくめた“フリ”をする仕事。
役柄がつらい・しんどいことと、役者自身が削られていくことは≒でありつつも、体制は健全であるべきと、まっとうな映画人は考えています。
【ミッドサマー】性の儀式は本当にやってる?出血シーンがある?
続いて、“性の儀式”の目的を考察していきます!
ホルガの村人たちが新しい”血”を取り入れるため
近親交配を続けると不健全なので、ホルガ村以外の場所から精子・卵子を調達したい村人たち。
「ミッドサマー」の面白味は、ホルガ村の矛盾にあると思います。
「言ってることとやってることが違ぇじゃねえか」というところがアリ・アスター的ポイントであり、性格の悪さであり、それこそが魅力。
重い障がいをもつ“ルビン”なる人物が出てきますが、村人は彼を神聖で、ピュアで尊い存在と崇めています。
一方で、彼が単純に、近親交配によって虚弱な肉体となっていることもわかっているのです。
ホルガ村には、この言い訳めいた空気が充満しており、だからこそ妙に信頼できない。
とはいえ、実際の神話や伝説に多く登場する近親交配のタブーこそ、われわれの矛盾そのものでしょう。
ホルガ村は、あやうい私たちと地続きにある、“ふつうの”村なのかもしれません。
ホルガの村人たちにとっては神聖な”儀式”である
神聖な儀式であり、ただの搾取であるというアンビバレント。
仰々しい段階をふんで、厳かな感じで手まねきされた先にあったのは、グロテスクながらシンプルなセックス。
ホルガはセックスカルトの類ではなく、彼らのなかでセックスは神聖な位置にありました。
とはいえ、夜中に2人で抜け出し消えていく男女がいたりと、実情はホルガのみぞ知るところ。
ホルガ内の価値観と、ぷらっとやってきた現代アメリカ人の価値観が1週間やそこらで重なるはずもなく、ずっと相容れないままなのが「ミッドサマー」の不均衡。
「スウェーデン美人とワンチャンあるかもな~」というアメリカ男子の浅はかさを、ホルガの側も利用していたのでしょう。
目の前の儀式を“不貞”と感じ「〇ね」と思うダニーは、ホルガ外の人間としては正常に感じます。
ホルガでは正当に焼き殺されたことになっているクリスチャンですが、ダニーにとっちゃ単に「ざまあ」であるという、「理由って目には見えないよね」という面白味もまたミッドサマー!
性の儀式シーンでは、クリスチャンと村人・マヤ(演/イサベル・グリル)の周りを村のおばさまたち(全裸)が囲み、歌を歌い、それにより萎えまくっていくクリスチャンの腰を押すおばあさま(全裸)がいたり…。
当のマヤも、指をからませようと試みるクリスチャンもそこそこに、村人の女性と共鳴しだす始末。
神聖な儀式は大真面目だからこそ気迫にあふれ、クリスチャンは恐怖に支配されつつ射精を迫られるアンビバレント…。
出血=マヤが処女ということを表している
マヤはビクスミンディグというセックスのライセンスを得たばかり。
のちに明かされたのは、ホルガの手先・ペレ(演/ヴィルヘルム・ブロムグレン)が、前もってマヤにクリスチャンの写真を見せていたという前段でした。
マヤは単純にクリスチャンの容姿を気に入り、初体験の相手として選んでいたのです。
クリスチャンが必死の射精を終えると、精子を体内で“ゆする”ような動きをしながら「赤ちゃんを感じるわ!」とつぶやいた恐怖の女・マヤ。
射精とともに用なしとなったクリスチャンが、皆に無視されつつ顔面蒼白で走り出すと、彼の性器は血でそまっているように見えます。
ビクスミンディグを得たばかりのマヤは処女であったでしょうし、苦行のような摩擦によって性器が負傷したのであろう、不憫なクリスチャン。
【ミッドサマー】性の儀式は本当にやってる?モザイクなし・ありの違いを解説
【結論】モザイクなしの“性の儀式”はディレクターズカット版で見られます。
通常盤 | 1時間58分ごろ |
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ディレクターズカット版 | 2時間21分ごろ |
通常盤
「フォー・ユア・バイタリティ(精力のために)」と謎の粉を嗅がされたクリスチャンが小屋に入ると、花々のなかで足を広げるマヤと、その周囲で歌う12人の全裸の女性たちが。
前述の通り、マヤがクリスチャンと心を通わす描写はまったくなく、精子提供者として女たちに搾取されまくるクリスチャンを眺めることとなります。
クリスチャンの下半身には大きなモザイクがかかり、話題にのぼった性器も見えません。
ディレクターズカット版
シーン構成自体は通常版と同じですが、モザイクがかかっていません。
個人的には、生の性器以上に、クリスチャンの腰を押す高齢女性のグロさが際立ちました。
通常版で、女性の手もとにまでモザイクがかけられている理由が、なんとなくわかります。
【ミッドサマー】性の儀式は飛ばしても問題ない?
うわさほど刺激的なものではないので、どうせなら見てほしいです。
“性の儀式”が話題になったのは、その生々しさではなく、意味不明さがゆえと感じます。
セックスシーンとしては非常に淡泊ですし、個人的には正月に親戚たちの前でリビングのテレビに儀式が流れても、笑って流せるかもしれません。
それまで甲斐甲斐しくクリスチャンたち旅行者の世話をしていたホルガの女性たちが、感情ゼロで精子をしぼり出すさまは見事なメッセージ性。
そもそもクリスチャンとマヤの体の動きにリアリティがないので、私たちが知るところのセックスをしていたかすら定かではないのです。
“性の儀式”は本作を代表するお笑いシーンでもありますので、ぜひ緩急を感じてください。
しかしスキップしたからといって、さほど問題はありません。
【ミッドサマー】性の儀式は実際の夏至祭で本当にやってる?
儀式はありませんが、夏至は恋が燃える季節です。
実際の夏至祭は、映画本編で描かれるように、外界と断絶された村でおこなわれるわけではありません。
古くから、夏至祭では結婚や恋愛を占う行事がありました。
伴侶をさがすことはかつて、皆の問題ごとだったということでしょう。
夏至は「性欲をかきたてられる日」ともいわれます。
スウェーデンを象徴するメイポールという柱は、夏至祭に不可欠。
映画ではルーン文字がほどこされていたメイポールですが、そもそも男性器の象徴であるとも言われているのです。
夏至祭ではありませんが、世界中の祭のなかには、性行為をともなう儀式があるのもまた、事実。
【ミッドサマー】性の儀式は画像検索で見られる?
儀式周辺の場面写真は見られますが、儀式そのものは見られません。
“性の儀式”は映画「ミッドサマー」の転換点となる重要なもの。
そもそも前後関係を知らない状態で画像を見たとしても「?」となるかもしれません。
画像でチラ見したくなるようなイケナイ感じのシーンでもないので、普通に映画全編を見るのが良いでしょう。
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【ミッドサマー】性の儀式を見たくない人は無理せずスキップしよう
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時間と魂を捧げて「ミッドサマー」の名シーンを完成させてくれた、フローレンスとジャック、2人のすばらしい俳優に敬意をこめて。
アリ・アスター監督の映画は話題性とエンタメ性が反比例するもの。
基本的に、意味などあってないようなものだし、やたらとトラウマ的な描写も多いです。
単なるグロ耐性でははかれない、ホラー経験値が必要。
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