北野武監督は、日本一のコメディアンから世界を代表する映画監督まで、あらゆる顔を持っています。
アート性の強い作品は特に海外の映画祭で高く評価され、近年ではエンタメ色の強い作品が続いています。
そして、2025年2月14日(金)に最新作「Broken Rage」がAmazonプライム限定で配信されました。
新作を観る前に、改めて北野武監督の功績と特徴を振り返っていきます。
【北野武】映画を一覧で紹介!公開された順番は
タイトル | 公開年 |
---|---|
その男、凶暴につき | 1989年 |
3-4X10月 | 1990年 |
あの夏、いちばん静かな海。 | 1991年 |
ソナチネ | 1993年 |
みんな〜やってるか! | 1995年 |
キッズ・リターン | 1996年 |
HANA-BI | 1998年 |
菊次郎の夏 | 1999年 |
BROTHER | 2001年 |
Dolls | 2002年 |
座頭市 | 2003年 |
TAKESHIS’ | 2005年 |
監督・ばんざい! | 2007年 |
アキレスと亀 | 2008年 |
アウトレイジ | 2010年 |
アウトレイジ ビヨンド | 2012年 |
龍三と七人の子分たち | 2015年 |
アウトレイジ 最終章 | 2017年 |
首 | 2023年 |
Broken Rage | 2025年 |
※↑タイトルをクリックで作品詳細へ移動します。
北野監督は製作トラブルを理由に、当初の予定とは変わって「その男、凶暴につき」で初めて監督に抜擢されました。
アクロバティックな暴力描写やキレのいい省略を活かした編集が高く評価され、以降も作品を公開していきます。
1998年の「HANA-BI」では、ヴェネチア国際映画祭の最高賞を獲得するほど、国際的な評価も高まりました。
世界的な名声を手にして以降は、「アウトレイジ」や「首」などエンタメ色が強い作品を手掛けるようになります。
そして、2025年にはアマゾン製作の新作「Broken Rage」が配信されました。
映画作家としてあらゆる変遷を辿ってきた、北野監督の新境地になるか楽しみです。
【北野武】映画の一覧!公開順に各作品のあらすじ・見どころ紹介
こちらでは、北野映画の各作品のあらすじや見どころを紹介していきます。
改めて北野映画の魅力に気付いてもらえると嬉しいです。
その男、凶暴につき(1989年)

「その男、凶暴につき」は、世界的映画監督に向けての第一歩である北野武監督のデビュー作です。
違法捜査が常套手段の刑事・我妻を主人公に、正義が揺らいでいくアウトローな世界を描きます。
粗暴な性格とは裏腹に、我妻は精神疾患を抱える妹を献身的に支えていました。
しかし、麻薬売人の死体が見つかってから、思いもしていない方向に事態は転がるのでした。
初監督作とは思えない洗練された演出と、オーラが漲る北野さんの演技が見どころの作品です。

3-4X10月(1990年)

「3-4X10月」は、北野監督が全権を握った最初の作品で、実質的なデビュー作とも言われています。
ダンカンさんやガダルカナル・タカさんなど、いわゆる「たけし軍団」の面々も出演しました。
ガソリン店員の雅樹は、些細な行き違いで暴力団と衝突し、抗争にまで発展させてしまいます。
のらりくらりとしている雅樹をよそに、事態は取返しのつかない方向に進んでいくのでした。
BGMをほとんど使わず、静かな映像の語りによって魅せていく硬派な質感が、見どころの映画です。
あの夏、いちばん静かな海。(1991年)

「あの夏、いちばん静かな海。」は、北野映画としては初めてのラブストーリーです。
音楽は、後に何作もタッグを組む久石譲さんが初めて担当しました。
ごみ収集の仕事をする聾者の青年・茂が、浜辺に捨てられたサーフボードを見つけて以降、サーフィンに没頭します。
同じ障害を抱えている彼女の貴子は、サーフィンに打ち込む茂を応援していましたが、ある日想定外の出来事が起こります。
セリフがほとんどない挑戦的な作風で、ロマンチックな雰囲気が見どころの映画です。
ソナチネ(1993年)

「ソナチネ」は、北野映画の美学が詰まった、一般的に最高傑作と言われている作品です。
北島組と近しい中松組と沖縄の暴力団・阿南組が抗争になり、北島組が沖縄に出向き、火消しを働きかけます。
なんとかなると思い沖縄に来た一向でしたが、想定外の出来事の連続で多くの組員を失ってしまいました。
激しい抗争とともに事態が複雑化する中、想定外の結末が待ち受けているのでした。
「キタノブルー」と言われる美しい撮影と、洗練された省略を用いた語り口が、絶品の名作です。
みんな〜やってるか!(1995年)

「みんな〜やってるか!」は、前作までとは打って変わったコメディ路線に振り切った作品です。
北野映画としては初めて、”ビートたけし”の名義で監督にクレジットされました。
性欲をこじらせた青年を描いた物語で、行き当たりばったりの奇行が続いていきます。
帝銀事件、三億円事件や、「座頭市」、「ザ・フライ」というフィクションまで垣根なくパロディが繰り出されます。
とにかく笑える方面に振り切った武映画の意欲作で、好みが分かれる映画です。
キッズ・リターン(1996年)

「キッズ・リターン」は、コメディ路線だった「みんな〜やってるか!」に続いて、またしても新境地となる青春映画です。
落ちこぼれの高校生であるマサルとシンジが、ボクサーから喰らったパンチをきっかけに、ボクシングに傾倒していきます。
マサルがシンジをボクシングに誘いましたが、シンジの方が実力を示して2人の間に気まずさが流れるようになりました。
青春期特有の淡い感情と儚さを描いた、今もなお語り継がれる青春映画の傑作です。
数少ない北野映画の青春映画ですが、「キッズ・リターン」が最も好きな方も多いのではないでしょうか。
HANA-BI(1998年)

「HANA-BI」は、日本映画としては39年ぶりにヴェネチア国際映画祭の最高賞を受賞した映画です。
「世界のキタノ」という名声を決定付けた代表作になります。
病気の妻を持つ男が主人公という「その男、凶暴につき」を彷彿させる設定が、北野映画らしさを感じさせる作風です。
妻の容態を案じた主人公の西は、ヤクザに金を借りたことで、ますます転落の深みにはまってしまいます。
ロマンティックな男女の関係と美しい映像、滅びの美学を感じさせる北野映画の代名詞のような作品です。
菊次郎の夏(1999年)

「菊次郎の夏」は、北野映画としては初めてのロードムービーです。
母と生き別れた少年と中年男性の夏の思い出を描いており、久石譲さんの音楽が印象的に響いています。
祖母と暮らしている小学3年生の勝夫は、幼い頃に父を亡くし母は遠くに行ってしまったと祖母から聞かせれていました。
勝夫は、部活の練習が休みになった期間を利用して、母を探しに行きますが、思いも寄らない出会いが待っているのでした。
久石譲さんによる美しい音楽と夏の空気感を切り取った、夏休み映画として絶品のクオリティです。

BROTHER(2001年)

「BROTHER」は、アート色が強かった北野映画が、エンタメ路線に向かい始めたきっかけの映画です。
北野映画としては、初めてロサンゼルスで撮影されており、映像にスケール感が加わりました。
荒々しい振る舞いをしていたヤクザの山本は、所属している花岡組の組長が殺害されたことで居場所を失います。
居場所を求めた山本はアメリカに向かい、裏社会で成り上がりますが、思いも寄らない落とし穴が待っていました。
「ファッキンジャップくらいわかるよバカヤロー!」の名セリフがどこで飛び出すのか要注目です。
Dolls(2002年)

「Dolls」は、西島秀俊さんと菅野美穂さんを主演に迎えたラブストーリーで、久しぶりに北野監督自身が出演していません。
久石譲さんが音楽を務めた最後の作品で、「Dolls」以降に少しずつ作品の方向性が変化しています。
3組の異なる男女の恋愛を描いており、北野監督は、「個人的な作品で、好きなようにやってみた作品」と語っていました。
心から愛した恋人を裏切り、お金を持っている人との結婚を選ぶという普遍的な物語です。
北野映画の中でも象徴的な映像が印象的で、ロマンティックな北野監督の美学が感じられます。

座頭市(2003年)

「座頭市」は、ヴェネチア国際映画祭で監督賞を受賞し、方向転換後の代表作です。
勝新太郎さんが主演した同名映画のリメイクで、北野監督自身が主人公を演じています。
時代劇にも関わらず、タップダンスの要素を取り入れる大胆な脚色は物議を呼びました。
盲目の剣士である市が、ヤクザの裏稼業に出くわしたことで、あらぬ恨みを買ってしまうという物語です。
北野映画史上最もヒットした映画で、間口が広く入門編として相応しいかもしれません。
TAKESHIS’(2005年)

「TAKESHIS’」は、北野監督曰く「100人いたら7人くらいしかわからない」というくらい賛否が分かれた作品です。
公開前まで全く情報が表に出ておらず、2005年当時に新作が発表された際には、大きな話題を呼びました。
役者志望でコンビニ店員の北野が、芸能界で活躍するビートたけしに出会うという複雑な構造のストーリーです。
ビートたけしに出会って以降の北野は、ビートたけしが出演する映画の世界に迷い込んでしまうようになります。
北野監督の葛藤が真正面から現れている作品で、抽象的な表現が見どころです。
監督・ばんざい!(2007年)

「監督・ばんざい!」は、コメディアンとしてのビートたけしが顔を出したようなコメディ映画です。
映画監督のキタノ・タケシが主人公で、得意の暴力映画を封印してあらゆるジャンルに手を出していくという物語です。
明らかに北野監督自身を投影した人物像で、2000年前後にあらゆるジャンルの映画を制作していたところも重なります。
前作の「TAKESHIS’」に続いて、自分が求める芸術が日本で評価されない葛藤を映画にしたと言います。
北野監督のフィルモグラフィを振り返りながら、もがきが感じられる人間臭い作品と言えるかもしれません。
アキレスと亀(2008年)

「アキレスと亀」は、北野監督の芸術家として葛藤を描いた作品です。
「TAKESHIS’」、「監督・ばんざい!」と合わせて”芸術家3部作”とも言われています。
群馬の資産家の息子である真知寿は、父の会社の破産と自殺により、家庭が崩壊してしまいました。
絵を描くことが好きな真知寿は、自分なりの人生を歩もうとしていましたが、波乱万丈の出来事が待っているのでした。
映画監督・北野武を網羅したいのであれば、避けることはできない転換期の1作です。
アウトレイジ(2010年)

「アウトレイジ」は、前作までの葛藤が嘘かのようにエンタメ路線に振り切った作品です。
残忍なシーンが多くR-指定になり、「全員悪人」というキャッチフレーズも話題を呼びました。
椎名桔平さん、加瀬亮さんなど、新しい顔ぶれも加わり、北野映画の新たなスタートと言えるでしょう。
関東を牛耳る山王会は、傘下の池元組が麻薬を処理する村瀬組と親しくしていることを不服に思っていました。
ヤクザの思惑が交差する「現代版仁義なき戦い」として大ヒットしたシリーズ1作目です。
アウトレイジ ビヨンド(2012年)

「アウトレイジ ビヨンド」は、前作に続きヤクザの対立を描いたシリーズ2作目の作品です。
前作の倍近くの興行収入14億円を記録し、北野監督の復活を印象付けました。
三浦友和さん、加瀬亮さんに加えて、西田敏行さん、松重豊さん、らが新しいキャストに加わっています。
特に西田敏行さんの大声で怒鳴りつけるシーンは、普段の穏やかな人柄と真逆で、観客を震え上がらせました。
前作より洗練された暴力描写とストーリーから、シリーズ最高傑作というファンも多いです。
龍三と七人の子分たち(2015年)

「アウトレイジ」シリーズの過激さから一転して、軽快な作風になったのが、「龍三と七人の子分たち」です。
藤竜也さん、中尾彬さんなど、主要キャストの平均年齢が72歳という、高齢の俳優陣が集結しています。
引退した元ヤクザが、オレオレ詐欺に引っかかってしまうという、いい意味でバカバカしい物語です。
ヤクザの組長をしていた龍三は、息子家族のもとで隠居していたものの、白い目で見られ窮屈な暮らしをしていました。
かつてのヤクザ仲間が集結したドタバタ劇に笑いがこぼれること間違いなしの1作です。
アウトレイジ 最終章(2017年)

「アウトレイジ 最終章」は、シリーズを締めくくる完結編です。
北野監督が独立したこともあり、オフィス北野製作としては、最後の作品になります。
韓国が舞台になるシーンもあり、最終章らしくシリーズで最もスケールが大きい映画になりました。
組長の死によって代替わりした日本最大の暴力団の花菱会を筆頭に、混沌とした裏社会の模様を描いています。
北野映画らしい、ニヒルな笑いと暴力表現が極まった映画です。
首(2023年)

”時代劇版アウトレイジ”とも呼ばれている「首」は、「座頭市」以来の時代劇となる作品です。
フィクションでは何度となく描かれた”本能寺の変”を独自解釈で描いています。
織田信長を加瀬亮さん、豊臣秀吉を北野監督が演じるという、年齢差度外視キャスティングも話題を呼びました。
迫力ある合戦のシーンとコントのような緩い笑いのギャップが魅力的な作品です。
中でも織田信長を演じた加瀬亮さんのキレのある演技が魅力的に映っています。

Broken Rage(2025年)

「Broken Rage」は、北野映画としては初めてとなる配信限定の映画です。
アマゾンスタジオで製作され、60分という北野映画史上最も短い作品となりました。
好き放題に取り組んだという北野監督の言葉通り、北野映画のセルフパロディのような作風になっています。
2月14日に配信されて間もないですが、早くも賛否が巻き起こっている意欲作となりました。
【北野武】映画の最高傑作ランキングTOP10
- ソナチネ
- HANA-BI
- その男、凶暴につき
- キッズ・リターン
- 3-4X10月
- あの夏、いちばん静かな海。
- 座頭市
- 菊次郎の夏
- BROTHER
- アウトレイジ
「キタノブルー」と言われる美しい色合いの映像や、省略表現が極まった「ソナチネ」が1位なのは揺らぎません。
意外とロマンチストな北野映画の良さが出た「HANA-BI」も上位には欠かせないでしょう。
初監督作にして主演を務め、極限まで狂気を表現した「その男、凶暴につき」もベスト3に入ってきます。
どの作品も素晴らしく悩ましいですが、狂気と笑いの狭間を描くと北野映画はより洗練されたものになると思いました。
狂気と笑いを基準に、ベスト10を選出したので、北野映画を観たことない人は参考にしてみてください!
【北野武】アマゾンプライムの新作はいつ?

【結論】北野武監督のアマゾンプライム新作は「Broken Rage」。2025年2月14日から配信開始。
北野監督が「首」の公開時の記者会見にて「次は大森くんと浅野くんでバカバカしいことをやる」と言っていました。
「Broken Rage」こそが、「首」の会見で言及していた作品なのでしょう。
北野監督自身が主演を務め、浅野忠信さんと大森南朋さんが、北野監督を取り調べる刑事を演じています。
60分という短い尺で、やりたい放題したという北野監督の、新境地が観られる作品です。
「アウトレイジ」シリーズを彷彿させる「Broken Rage」というタイトルは、自己破壊を暗示しているのかもしれません。
【北野武】映画を見るならTSUTAYA DISCASがおすすめ

【結論】北野武監督の映画はサブスク配信していない!映画を見るならTSUTAYA DISCASがおすすめ!
最新作の「首」と「Broken Rage」を除いて、北野武監督の映画は動画配信サービスで見ることができません。
そのため、各作品のDVDをレンタルすることが、1番早く北野映画を見る方法になります。
そこでおすすめなサービスがDVDの宅配レンタルを行なっているTSUTAYA DISCASです。
今なら初回30日間無料
近くにTSUTAYAが無くてOK!返却は郵便ポストへ
公式サイト:https://movie-tsutaya.tsite.jp/netdvd/dvd/top.do
【北野武】映画一覧まとめ!アマゾンプライム新作は2月14日から配信
- 北野武監督は世界中で評価されている偉大な映画監督
- 過激な描写と美しい映像が評価されている
- 方向性を転換しながら今も映画を作り続けている
改めて北野武監督の作品を振り返ると、名作が何本も産み落とされていることに驚きます。
過激な暴力描写、美しい映像、洗練された省略表現、などと美点を挙げるとキリがありません。
ただ、北野映画のほとんどはサブスク配信されていないのが現状です。
しかし、DVDの宅配レンタルをしているTSUTAYA DISCASでは、鑑賞できるので利用してみるのをおすすめします!
そして、ある程度過去作を観た上で、最新作「Broken Rage」を観るのが良さそうです!
>北野武監督以外の日本の有名な映画監督って誰?知りたい人はこちら
