前作「みんなのうた」から受け継いだDNAは物語の基盤に、そして“自信”となって作用していました。
ある日いきなり大人になるわけじゃない、地続きの子ども時代がいつまでも恐ろしいトラウマ的ホラー。
教室から遠く離れた大人な貴方もきっと震える、映画「あの子はだあれ」を解説します!
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この記事には映画の結末や重要なネタバレを含む可能性があります。未鑑賞の方はご注意ください。
公開日 | 2024/7/19 |
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監督 | 清水崇 |
原案 | 角田ルミ 清水崇 |
脚本 | 角田ルミ 清水崇 |
キャスト | 渋谷凪咲 早瀬憩 山時聡真 穂紫朋子 染谷将太 ほか |
音楽 | 小林うてな 南方裕里衣 |
上映時間 | 1時間47分 |
配給 | 松竹 |
公式サイト | 「あの子はだあれ」公式サイト |
上映劇場 | 「あの子はだあれ」上映劇場 |
【あの子はだあれ】映画のあらすじ(ラスト・結末まで)
まずは、「あの子はだあれ」映画のあらすじをご紹介します。
ラスト・結末までの内容も含まれるので、映画を未鑑賞の方はご注意ください!
起:呪われた学校
君島ほのか(渋谷凪咲)は、恋人の七尾悠馬(染谷将太)が目の前で事故に巻き込まれ消沈しています。
悠馬は一命をとりとめましたが、意識は戻らず管に繋がれていました。
看病の日々が続くなか、ほのか は臨時教師として、とある学校で補習授業を担当することに。
担当クラスには、偶然、悠馬の事故を目撃していた三浦瞳(早瀬憩)という生徒がいました。
瞳がひときわ仲良くしている高谷さな(穂紫朋子)という生徒は、子どもたちのなかでも浮いた存在で、ほのか の目にも不気味に映ります。
そんな補習授業初日、なんと ほのか の目の前で、担当クラスの生徒である小日向まり(今森茉耶)が飛び降り自殺を図るのです。
さな は、まり の飛び降りを遠巻きに見ながら奇妙な歌を口ずさんでいました。
承:みんなのうた
さな の歌は、無意識下で生徒たちに広まっていきます。
生徒の死を聞き駆けつけた保護者たちは、その歌を耳にするとひどく怯えだしました。
特に、瞳の母は当時、落下事故の現場に居合わせており「よく覚えていない」とひときわ恐怖をあらわにしています。
ほのか は、当時から教諭として働いていた現校長に、事故の真相を聞くことにしました。
現在もなお怯えていた瞳の母同様に、当時、事故に立ち会った生徒たちは精神不安から登校できなくなったのだそう。
しかし、そんななかでも登校し続けた高谷さな は、クラスメイトに怖がられ、いじめの対象となっていました。
攻撃は最大の防御…てかまって、現代の高谷さな、霊確定!
ケガをさせられるほどの激しいイジメにも顔色ひとつ変えず、さな は「みんなの音がほしい」と笑っていたというのです。
校長は、当時の事故の真相を探るべく、ほのか を連れ、かつての教え子で探偵の権田(マキタスポーツ)の元を訪れました。
転:悠馬の真実
権田もまた瞳の母同様にひどく怯えた様子で、ほのか達に古いカセットプレーヤーを渡します。
セットされたままのカセットには、さな の声と人が死に際に出す音とが交互に録音されていました。
さな が録音する相手は誰でもよく、手当たり次第に“音”を集めていたようです。
衝撃の音声に、カセットプレーヤーを回しっぱなしにしたまま放心していた ほのか たちは、プレーヤーから流れだす“追加音源”に驚きます。
さな の音声は「2024年…」と現代の日時を読み上げていました。
皆が恐怖で逃げ腰のなか、ほのか はプレーヤーを持ち帰り真相解明に挑みます。
そして、悠馬が高谷さな の弟であると気付くのです。
結:みんなのかわり
確信を胸に、存命である高谷さな の両親に会いにいった ほのか。
さな は、“死の音”に取り憑かれたあまり、最後に自分の絶命の瞬間を録音していました。
おぞましいことに、さな は両親をだますやり方で、何も知らない両親に自殺を幇助させていたのです。
我が子を殺めたショックから精神を病んだ さな の母・詩織から、せめて幼い長男を守るため、さな の父は長男を施設へと預けたのでした。
ほのか は、さな の暴走を止めるため、廃墟となったかつての高谷家へ。
自殺の瞬間を繰り返す さな を、体当たりで止めた ほのか は、さな の代わりに死の縁へ立たされます。
そこへ、病院で眠っているはずの悠馬がワープ!
悠馬の愛と、その他もろもろの助けを得て、ほのか は呪いの連鎖を止め、死を免れた…はずでした。
…実は、ほのか は さな との対峙の際に命を落としていたのです。
自分が死んでしまったと気付いた ほのか が叫びだすも、誰にも声は届かないのでした…。
【あの子はだあれ】ネタバレ解説①:年齢制限や中止と言われた理由は?
清水崇監督の「あの子はだあれ」ですが、上映中止と噂されていたようです?
ここでは上映中止の噂や映画に年齢制限があるのかをご紹介しています。
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「あの子はだあれ」映画に年齢制限はある?
年齢制限は「G」ということで年齢制限なしに誰でも観られる区分です。
ショッキングな映像は無いこともないですが、リアリティを伴わないのでトラウマ因子にはなりづらそう。
トラウマ地雷は千差万別だからなんとも言えませんが…
映倫が大丈夫というなら大丈夫!
世代によって見え方がちがう映画のように感じたので、色んな視点から出るたくさんの感想を読んでみたいです!
「あの子はだあれ」映画が中止と言われた理由は?
気合い十分な清水組宣伝部の仕掛けた罠にかかりましたね…?
公式HPにある「上映中止になった特別映像はこちら」という、興味をそそるバナーをタップ。
“上映中止Ver”という遊び心たっぷりの予告編が観られます。
しかし“閲覧注意”という文言は使い勝手が良いですね〜
【あの子はだあれ】ネタバレ解説②ラストや「みんなのうた」との関連性は?
次に、「あの子はだあれ」映画のネタバレになる部分を解説。
清水崇監督の前作「みんなのうた」との関連性についてもご紹介していますよ。
「あの子はだあれ」ラスト・結末の解説
混乱を防ぐため、あらすじでは大分カットしたラストの畳みかけ。
さな に取り憑かれた瞳が、さな の最期を再現するかのように旧高谷家に侵入し、首にコードを巻きつけて死なんとするその時、ほのか が突入し瞳(さな)を静止します。
すると瞳(さな)と ほのか は学校の屋上へとトリップ。
ついでに背後には1992年の少女たちもトリップ。
ほのか は今にも屋上から落ちそうになっていましたが、病室からワープしてきた悠馬と、若き日の悔いを胸に娘を救いにきた瞳の母に救いあげられます。
助かった ほのか…と思いきや、ほんとは屋上から落下してしまっていたのです。
さな が連れていっちゃったみたい
でも ほのか の死は、その他大勢の罪なき人々を生き返らせる、救いの死でもあったのでした。
まじで、この説明以上でも以下でもないのでご自身の目でお確かめいただきたいです
「あの子はだあれ」の「あのコ」の正体は?
高谷さな です。
信念を曲げないマッドサイエンティスト・さな。
さな にとって、音の収集が夢であり希望そのものだったからこそ、悲惨な事件は起こり続けました。
なんでも一律に、前向きな言葉が指し示すものが“明るい”と考えるのは危ないですね。
「あの子はだあれ」元ネタの怪談はある?
元ネタとなった怪談等々はないようです。
後述しますが、清水監督の前作「みんなのうた」と同じ世界線で描かれた本作とには、あきらかな共通点がいくつもあります。
あえていうならば「みんなのうた」が元ネタ、もとい物語の“種子”のような存在でしょう。
「あの子はだあれ」と「みんなのうた」の関連性は?
前述の通り「みんなのうた」が、今作の“種子”になっているという印象でした。
前作ではキャストの魅力が前面に出ているぶん、今作では地続きのテーマ自体を前側に引っ張ってきたという感覚です。
個人的には、キャストも引き継いだ高谷家の登場シーンは「みんなのうた」を観ていない方が衝撃的で怖がれる気がします。
「あの子はだあれ」→「みんなのうた」と遡っても楽しめると思います!
【あの子はだあれ】印象に残ったキャスト3選(ネタバレあり)
次に、「あの子はだあれ」で特に良い演技をしていた印象に残ったキャストを3名ご紹介します。
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①高谷詩織役/山川真里果
「みんなのうた」から続投の強烈ママ・詩織を演じた山川麻里果さんの印象は、いずれ本作の内容を忘れてもなお脳裏にこびりついているであろう衝撃的なものです。
前情報を一切入れずに本作を鑑賞した筆者、高谷家の“ループ”シーンで強烈なデジャヴを感じ(当たり前)、ついに自分に予知能力が芽生えたかと本気で感動してしまいました。
前作でも感じた山川さんの、声色まで一定な“ループ芸”はそれがゆえ不気味で、作品全体のホラー度をグンと上げる仕上がり。
哀しき亡霊として生死をさまよう詩織を、感情とは別ベクトルで体現した山川さんの底力にワクワクしました。
②瞳の母役/小原正子
「クワバタオハラがおったら、そこは大阪や」by永野でおなじみのオハラこと小原正子さん演じる、トラウマに苦しむ女性が素晴らしかったです!
ただただ普通の人の役なのに、強烈な印象が残っています。
娘の瞳に対し、子どものような甘え声ですり寄ってみたかと思えば、感情あらわに怒鳴りちらしたりと、メンタル異常をもつ母親をリアリティ満開で表現されていました。
彼女の存在に、幼くして友人の死を体験した者の苦しみが背負わされていたことで、物語への信頼度が上がった気がします。
感情の表現が緻密で、信頼のおける存在感でした!
ちなみに彼女が瞳を怒鳴っていたとき、通りかかったサラリーマン風の通行人役の方が踵を返す芝居も、リアルですごくよかった!細部のリアリティすき
③高谷さな役/穂紫朋子
前作「みんなのうた」から圧倒的ホラーパートを担ってきた高谷家、その中心人物ともいえる さな を演じきった穂紫さんの、板についた怨霊加減が最高でした。
引き続き完了しない夢の続きを追って、時空を超えて他人を殺しまくる高谷さな。
恐ろしさを内側に秘めながら、肉体表現が少ないのもまた怖い。
さな は抹殺されていないと記憶しているので、さらなる続編での活躍に期待です!
【あの子はだあれ】怖いシーン・場面3選(ネタバレあり)
そして「あの子はだあれ」映画を実際に見て”怖い”と感じたシーンを3つご紹介します。
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①クレーンゲーム
予告編でも印象的に使われているカットですが、“よくわからないけど気持ち悪い”という、ホラーファンにしか通用しないあやふやさをもった素敵なシーンです。
一見すると さな に見える少女が、クレーンゲームの機械のなかで首元をクレーンされているアートな描写。
まぶたに目を書いているような?そもそも全身が発泡スチロールのような?
でも肉体のようなものが、“ふんわりつかむからゲームとして成り立っている”はずのクレーンに首を掴まれ、千切れんばかりに振り回されている…。
案外、文脈とかじゃなくインパクトの強いカットの方がトラウマになったりしますから、お気をつけて。
②デジャヴ
先ほどもふれましたが、不勉強な私は本作が「みんなのうた」の続編的立ち位置であることを知らず、高谷家のシーンを「なんか見たことある…絶対見たことある」と戦々恐々と眺めていました。
「村」シリーズでも描かれた、“死の瞬間を繰り返す死者”の不気味さと、彼らの無機質な存在感は清水作品のアイコンでもあります。
機械のバグよろしく台詞を反復し続ける高谷家に翻弄される、生者・ほのか の閉塞感に身の毛がよだちました。
③映りこみ霊
「呪怨」のころから清水監督の仕掛ける映りこみ霊に脅かされてきた私たちですが、本作でも遊び心あふれる霊たちにゾクッとさせられました。
影や反射のなかだけにあらわれる制服の霊、こちらの意識を一瞬でかっさらうように画面を横切る霊、ふらふら映りこんでいたかと思えば全力ダッシュしてくるパワー系の霊…。
特に、昔から怖くて仕方なかった、教室の下の方についている謎の小窓から見える、否、小窓から“しか見えない”何者かの足は最恐でした。
ちょっとしか見えないからこそ、「いま見えたのって私だけじゃないよね…?」と自分の目を疑うシステムで恐怖倍増です!
【あの子はだあれ】を実際に鑑賞した感想と評価(ネタバレあり)
ストーリー展開
「村」シリーズを観ていれば、清水作品のタイムリープやタイムスリップ、急な幽体離脱や時空のひずみ・ゆがみなどは特に気にせずにいられます。
よって、文字通り時空を越えてぶっ飛んでいく、またはぶっ飛んでくる人間の存在を受け入れられるかどうかで解像度はかなり変わってくるのではないでしょうか。
展開としては、「諸悪の根源を絶って前へ進もう!」というシンプルなものに感じましたが、いかんせん時空がバラバラになり再構築されていくので、よくわからないところもあります。
…ありますが、それでいいのです。
結末への評価
詩織が瞳の肉体から、娘・さな をひっこぬいていったときはうれしかったです。
周囲に想いを寄せていろんな人を救っていたはずの ほのか が足元を掬われたのは悲しかったですが、悲しくあるのがホラーヒロインという面もありますから、正しいでしょう。
エンドロールでおまけ的に救われた数々の“蘇り人”たちと、ヒグチアイさんの強い声がマッチして、ほのか の功績がもっとすごいものになっていたような気がします。
ザ・ホラーなバッド匂わせエンドは、もはや文化でもあります
怖さ…
筆者自身、かなりいけるクチでして、「これほとんどジュースだから呑んでみなよ」状態になるのではと危惧しなくもないですが、ホラー初心者の方でもいけるのではないでしょうか。
個人的見解では、グロなし、爆音脅かしなし、オモロババア霊ありのコメディ作品と捉えています。
ホラーは耐性だ…怖がりの君こそ楽しめる至極のエンタメだぞ…カモン
再鑑賞
【あの子はだあれ】ネタバレあらすじのまとめ
最後に少しふれましたが、オモロババア霊と失礼極まりない呼称をつけてしまったおばあさんの、衝撃的な面白さこそ劇場で体感してほしい。
あれはスクリーンがデカければデカいほど、落差で面白いです。
正直、オモロババア霊をみるためだけに劇場に行っても元がとれるくらい面白いので、もしまだ未鑑賞でしたら今すぐ劇場へGOしてください!