「ドライブ・マイ・カー」は、カンヌ国際映画祭、アカデミー賞はじめ、多くの映画賞を受賞した日本映画の名作です。
西島秀俊さんの演技は世界中で評価され、濱口竜介監督は気鋭の若手監督から「世界のハマグチ」と呼ばれるに至りました。
ただ、やや玄人好みな作風あってか、好みが分かれている作品でもあります。
こちらでは、あらすじやネタバレを含む細部に渡る解説をしていくので、作品の魅力を知りたい人は参考にしてみてください。
作品名 | ドライブ・マイ・カー |
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公開年 | 2021年 |
上映時間 | 179分 |
監督 | 濱口竜介 |
脚本 | 濱口竜介、大江崇允 |
音楽 | 石橋英子 |
キャスト | 西島秀俊 三浦透子 岡田将生 霧島れいか |
配給 | ビターズエンド |
【ドライブマイカー】あらすじをネタバレありで”わかりやすく”解説
「ドライブ・マイ・カー」のあらすじを、起承転結に分けて解説していきます。
話の筋を知った上で鑑賞したい人は、参考にしてみてください。
起:悠介と音の生活
俳優であり舞台演出家である家福悠介は、幼い娘を15年前に亡くした後も、妻の音と穏やかな暮らしを送っていました。
悠介は、日本語以外の言語も飛び交う前衛的な舞台を作っている、世界的にも一目置かれる演出家です。
対して音は、深夜の挑戦的な枠を中心に活躍する脚本家でした。
お互いの愛を感じながら仲睦まじい夫婦でしたが、ある日悠介は、音の不倫現場を目撃してしまいます。
動揺した悠介は、不倫を目撃したことを伝えられずにいると、音から「大事な話がある」と告げられます。
妻からの告白を恐れた悠介は、いつもより遅い時間に帰宅すると、くも膜下出血で音が亡くなってしまいました。
承:広島にて新たな出会いが
悠介がよく演じていた「ワーニャ伯父さん」という演目は、自分の境遇と重なるところが多く、トラウマから演じられなくなります。
2年後、演出家に専念するようになった悠介は、広島の国際演劇祭にてレジデンスアーティストとして招かれました。
演劇祭側の都合で、大事なルーティンである運転ができなくなった悠介は、ドライバーのみさきと出会います。
みさきの風貌も相まって、怪訝な気持ちでいた悠介でしたが、心地よいみさきの運転に身体と心を預けるようになります。
一方オーディションでは、様々な国から応募がある中、音の浮気相手かもしれない高槻の名前もありました。
悠介は、オーディションを経て、これまで自分が演じてきたワーニャの役を高槻に託すのでした。
転:高槻の独白
悠介の演出は、ひらすらじっくりとセリフの抑揚を抜いて、何度も本読みを繰り返すというものです。
意図が掴めない俳優から反発も生みましたが、次第に演技の質が向上していくのを、一同は感じていきます。
しかし、高槻は依然として演技の本質に辿り着けず、悠介に不安を打ち明けるのでした。
話はやがて音の話に発展していくと、高槻が音から授かったという物語を語り始めました。
高槻が語る物語は、悠介が目を背けてきた音との関係を言い当てており、激しく動揺します。
独白を経て高槻は演技の殻を破りますが、独白の直前に犯した傷害致死罪により逮捕され、演劇への出演は叶わなくなりました。
結:悠介の後悔
不測の事態に、悠介は動揺を隠せずにいると、みさきの提案で車の中で落ち着いて考えることにします。
少し考えた悠介は、みさきの故郷である北海道の上十二滝村に連れていって欲しいと伝えました。
道中にお互いの苦しく切実な過去を打ち明け合い、2人の関係性は発展していきます。
みさきの故郷に到着すると、みさきはかつて母を見殺しにしてしまった過去を告白しました。
悠介は、思わず音に対する怒りと自責の念を語り出し、涙を流します。
悠介の語りを受けて、そっとみさきに抱き寄せられた悠介は、ワーニャを再び演じる決心がつくのでした。
【ドライブマイカー】ラストの意味&ネタバレ部分の解説
「ドライブ・マイ・カー」の結末やネタバレに関わる細部の解説をしていきます。
作品の深みと魅力が伝われば嬉しいです。
「ドライブ・マイ・カー」ラストの意味・結末を考察
音に対する後悔を打ち明けた悠介は、ワーニャを再び演じて演劇を成功に導きました。
演劇を鑑賞したあと、みさきはどうやら韓国にいることが示され、犬と暮らしている様子が伺えます。
みさきの現在の生活が具体的に示されることはないですが、事故の傷跡が治療されていることははっきりわかります。
明るい表情のみさきが車を運転にしている姿を映し、映画は終わりました。
謎に包まれたラストですが、「ドライブ・マイ・カー」というタイトル自体が解釈のヒントになっていると濱口監督は言います。
恐らくみさきは、家福から車を譲ってもらい”自分の車”として運転しているのでしょう。
韓国にいるのは、作中で登場した夫婦の生活模様に影響を受けたのかもしれません。
どうであれ、過去の呪縛から解き放たれ、自分の人生を生きる美しさを捉えた素晴らしいエンディングでした。
家福とみさきの関係は?
家福とみさきの関係は当初、ドライバーと乗客という主従関係が結ばれていました。
運転席と後部座席という離れた位置関係は、やがて運転席と助手席へと近づくとともに、心の距離も縮まります。
家福とみさきの関係の発展は、「ドライブ・マイ・カー」の興味深いモチーフです。
当初は主従関係という縦の関係だったものが、人生の後悔を打ち明けていくことで、疑似的な親子の関係性に至ります。
家福の亡くなった娘とみさきの年齢が同じことから、2人を重ねていることは明らかでしょう。
クライマックスのみさきから家福への抱擁は、恋愛の匂いをまったく感じさせませんでした。
ささやかながらも、対等で深い絆が丁寧に描かれているからこそ、雪山のシーンで巨大な感動が生まれるのだと思います。
高槻は音の浮気相手だった?
音の浮気相手は、作中では具体的に示されることはありません。
ただ、家福は高槻を浮気相手の1人として疑っており、高槻も音に対する好意を隠していません。
しかし、濱口監督のインタビューによると、不倫シーンが高槻であるとは限らないように撮影したと語っています。
明確に音と高槻が不倫関係だと悟られないように、セリフのニュアンスもかなり緻密に演出したそうです。
ただ、個人的な解釈では、バーの会話で「セックスしないとできない会話がある」という高槻の発言が気になります。
音の物語は性行為中に語られるため、高槻が、家福が知っている話の先を知っているということは…といったところでしょうか。
ただ、個人的には音が誰と不倫していたかは、作品の本質には全く関わらないところだと思っています。
「ドライブ・マイ・カー」は、音という人間の多面性の肯定と、家福の内面の傷に向き合う物語だからです。
「ドライブ・マイ・カー」テーマ・伝えたかったことを考察
「ドライブ・マイ・カー」のテーマは実に多岐に渡るため、かなり複雑な作品に思われます。
しかし、最も作品の中心を通っているモチーフは、”喪失からの再生”なのではないでしょうか。
「ドライブ・マイ・カー」では、3つの喪失が作中で扱われます。
悠介にとっての音、みさきにとっての母、そして高槻にとっての音です。
言うまでもなく、人間の死は取返しがつかないもので、高槻の傷害致死によって喪失のモチーフはさらに強調されます。
3人が失ったものに対してどのように向き合っていくのかを読み解くと、「ドライブ・マイ・カー」は観やすくなるでしょう。
【ドライブマイカー】気持ち悪い/良さがわからないと言われる理由
「ドライブ・マイ・カー」が気持ち悪い、良さがわからないという感想も一部にはあります。
なぜ、そのような感想が生まれてくるか考察してみました。
家福と音の夫婦関係
一般的なドラマと比べると、家福と音の関係性は、かなりよそよそしいものに見えます。
恐らく村上春樹さんの原作の言い回しを踏襲した結果だと思いますが、2人の仲睦まじい様子と反して不穏な雰囲気を感じます。
愛していると言いながら、大切なことを話さない2人に、なにやら気持ち悪さを感じてしまうのでしょうか。
「ドライブ・マイ・カー」の冒頭は、性行為から始まるのも特徴です。
いきなりエキセントリックな描写から始まり、どこか浮ついた会話が展開されることに、奇妙な感覚を覚えた人もいるでしょう。
いい意味での不穏さを感じる人もいれば、違和感がつきまとったまま、という人がいるのも仕方ないのかもしれません。
たびたび続く”無音”の状態
「ドライブ・マイ・カー」は、静かな映画で大袈裟な感情表現や音楽使いもありません。
繊細に人物たちのドラマが紡がれていきますが、時折印象的な無音が訪れることがあります。
特に無音が強調されるのは、みさきの故郷に辿り着いたシーンです。
トンネルを抜けると雪が積もっており、音が吸収されたということで、リアリティ的にはそこまで不自然なものではありません。
演出の狙いとしては、クライマックスに向けて一旦耳を休めて欲しかった、という意図もあったそうです。
ただ、静かなドラマに乗っていけてない観客にとっては、無音の時間が苦痛に感じたのかもしれません。
海外での評価が高すぎ?
「ドライブ・マイ・カー」を面白く感じなかった人にとっては、海外の高評価が不自然なものに思えてしまうのかもしれません。
近年でも、日本映画が海外で高く評価されることはありましたが、「ドライブ・マイ・カー」の評価は圧倒的です。
カンヌ映画祭の脚本賞に始まり、アカデミー賞では、日本映画で初めて作品賞にノミネートされました。
静かなドラマでありながら、象徴的なテイストが海外の批評家に受けやすい作風なのは、間違いないでしょう。
日本映画と言いつつ、ヨーロッパの映画のような雰囲気が、人によっては受け入れづらかったのだと思います。
【ドライブマイカー】注目すべきキャスト3選
「ドライブ・マイ・カー」の注目すべきキャストをピックアップして紹介します。
主要キャストの演技は必見です。
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家福悠介/西島秀俊
「ドライブ・マイ・カー」の主人公である家福を演じたのは、国際的な活動も目立つ、西島秀俊さんです。
同作の演技で、海外の数々の主演俳優賞を受賞し、近年の日本人俳優で最も評価された俳優の1人です。
北野武監督や黒沢清監督など、世界的に評価が高い監督の出演を続けており、いよいよ「ニシジマ」の名前が広まりました。
Apple製作のドラマ「サニー」でも主要キャラクターを演じ、今後の海外進出にも注目が集まります。
西島さんが演じた家福は、妻を亡くした演劇の演出家で、前衛的な作風が世界的に評価されています。
硬派で知性ある振る舞いですが、音を亡くしたことに深く傷ついているという役柄でした。
渡利みさき/三浦透子
「ドライブ・マイ・カー」のキーパーソンであるみさきを演じたのは、ミュージシャンとしての活動も目立つ三浦透子さんです。
最近では結婚を発表し、公私ともに最も乗りに乗っている若手女優の1人です。
ぶっきらぼうながら自己が確立された演技で、キネマ旬報ベストテンの助演女優賞を受賞しました。
子役時代から多くの作品に出演しつつ、音楽活動の評価も高いため、今後の活動が要注目です。
「ドライブ・マイ・カー」で演じたみさきという役柄は、寡黙に家福のドライバーを務める若い女性というものです。
濱口監督が、衣装合わせで「みさきがいる」と感じたという存在感を、遺憾なく発揮しました。
高槻耕史/岡田将生
「ドライブ・マイ・カー」で家福と相対する高槻を演じたのは、岡田将生さんです。
若くして人気俳優の立ち位置を確立し、最近では「御上先生」での演技が注目を集めました。
また、同じく村上春樹さん原作のNHKドラマ「地震のあとで」にも出演しています。
「ドライブ・マイ・カー」で演じた高槻は、家福から音との不倫を疑われている若い俳優という役柄です。
性にだらしない一面がありながらどこか人として憎めない、と思いきや唐突に沸き上がる狂気がリアルに表現されていました。
岡田将生さん以外では成立しないであろう、一世一代の名演だったと思います。
【ドライブマイカー】見どころ&映画の重要なポイントを紹介
「ドライブ・マイ・カー」の見どころと重要なポイントを紹介していきます。
シンプルな構成ですが、重層的な要素があるので、参考にしてみてください。
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見どころ①:劇中劇を見逃すな
「ドライブ・マイ・カー」は、映画の中で演劇を作っていく過程を描くという、いわゆる劇中劇が用いられます。
少し複雑な構造ですが、”演技の演技”を描くことで、家福の奥底の心情を描きながら物語に緊張感が生まれていました。
作中で語られる「ワーニャ伯父さん」は、痛いほど家福の境遇と重なります。
「ワーニャ伯父さん」では、どれだけ辛いことがあっても働き続けよ、と語られていました。
作中で演劇を扱うのは濱口監督の得意技なので、過去作を鑑賞するとスムーズに観られるかもしれません。
もう一度鑑賞したという方は、「ワーニャ伯父さん」の戯曲を読んでみることをオススメします。
見どころ②:家福の涙を見逃すな
「ドライブ・マイ・カー」は、家福が徹底気に心の傷から目を反らし続ける物語です。
左目が緑内障だと診断されるシーンがありますが、気付いたときにはもう遅いという話です。
作中でどれだけ辛いことが起きても、家福は涙を流すことがありませんでした。
緑内障をケアする目薬が、家福の虚構の涙として演出されているくらい、家福は”泣けない”人だったのです。
しかし、高槻の独白とみさきとの交流を経て、家福は心の底から悲しみを吐露し、涙を流します。
目薬の涙が、本物の涙になり悲しみが浄化されるという、美しい展開に感動せずにはいられません。
見どころ③:赤いサーブを見逃すな
家福の愛車「サーブ900」は現在は生産されていないビンテージカーで、本作のもう1人の主役とも言えます。
赤いサーブが音の棺桶として象徴されている、という読み解きもできます。
そして、原作の黄色のサーブから赤いサーブに変更されているという点も興味深いです。
しかし、もはやそんな小難しいことはどうでもいいというくらい、サーブがカッコよく撮影されています。
赤いサーブという印象的な車が、緑が混じる広島の街を駆け抜けていくのが、とても美しいです。
ただただ、この美しさに身を委ねてみるのも、「ドライブ・マイ・カー」の極上の愉しみ方だと思います。
【ドライブマイカー】原作小説を紹介

「ドライブ・マイ・カー」は世界的な小説家である、村上春樹さんによる短編集からの一編です。
同作は、「女のいない男たち」という短編集に収録されています。
女を失った男という、いかにも村上春樹さんらしいモチーフが語られており、高い評価を受けました。
映画では、「ドライブ・マイ・カー」だけでなく、収録作である「木野」と「シェエラザード」の要素が取り入れられています。
改めて原作を読んでみると、とてつもない脚色のテクニックに気付かされます。
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【ドライブマイカー】喪失と再生をテーマにした逞しいドラマ映画
- 「ドライブ・マイ・カー」は世界中で高く評価された映画
- 濱口監督の演出と西島秀俊の演技が世界的に評価された
- 象徴的かつたくましい物語が胸を打つ作品
「ドライブ・マイ・カー」は世界中で高く評価された映画ですが、一部の観客には面白く感じないこともありました。
全体的には濱口監督の演出と西島さんの演技が評価されており、ポイントを押さえると面白さが受け取れるはずです。
象徴的な作風でありながら、物語の中心にあるのは、喪失と再生によるたくましいドラマです。
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